序文2       北京門礅から中国門礅

大可

 

全国促進伝統文化工程工作委員会顧問

 中国文物保護基金会古建委員会副主任


岩本公夫氏は前世紀の九十年代初めから北京門礅の収集、整理及び研究をされ、「北京門礅」を出版されました。氏は中国語は上手でない還暦を過ぎた日本の一市民ですが、自費で門礅の保存に尽くされた努力は多くの中国人を感動させました。

 

更に人々を感動させたのは、その後十数年間研究を続けられ、調査地域は北京市から約20の省まで拡大された事です。大まかに計算しても氏が現場で門礅を拓本に採ったり測量したりするだけに千時間は掛かったでしょう。こうした作業は専門家にとっても簡単なことではありません。しかも、氏は私より歳を召しておられ、中国語での会話は十分でなく、日本から自費で各地に行かれました。特に感心したのは氏のこうした作業は名声を得る為でなく、中国の多くの門礅資料を残す為に行われたことです。

 

 

 

最初に出版された「北京門礅」を“沢山の果実を付けた一本の木”だとすると、この「中国門礅」は“沢山の果実を付けた木が溢れている果樹園”だと言えるでしょう。私が見る限りでは、氏が収集・整理された「中国門礅」は内容が最も豊富な門礅資料集です。この本は我々の為に多くの文化遺産を残して下さいました。もし氏の努力が無かったら我々はこの成果を見ることは出来なかったのです。

 

「北京門礅」から「中国門礅」までの研究の特徴は資料記録性が強い事です。沢山の資料を提供しているのに対して立論は少ないのです。立論すれば正確なこともあり、錯誤に終わることもあります。豊富な資料を満載する書籍は信用度が高く、読者を誤らせる確率は低く、書籍の価値は高くなります。これに対して資料が少なく立論が多い書籍は情報の不足により、多くの場合立論者が独り言を言って居る事になり、他人が反対意見を出そうとしても難しい。資料が多く立論が少ない書籍では、他人に考える余裕を多く与え、多くの人がその討議に参加してもらうのに便利です。

 

 

 

「中国門礅」が出版される前に、中国に門礅がある事を知っている人は少なくない。しかし、中国の門礅はどこにあるのかと言える人は極めて少ない。各地にどんな門礅が在るのか言える人はもっと少ないだろう。「中国門礅」があったら、中国にある門礅の分布状況が分かり、各地にどんな門礅が在るのか、その風格・特徴を知ることができます。この作用があるので「中国門礅」は中国の建築文化への貢献は大変大きいのです。

 

                               20139