第1節 保定市
2005年10月19日旅行の途中、北京の約140km南にある保定市に立ち寄りました。
古くから栄えた由緒ある都で、1957年から10年間河北省の省都でした。(現在の省都は石家庄市)
ここで獅子型1組・抱鼓型10組・門枕石1組を確認しました。
箱子型には出会いませんでした。
抱鼓型門墩を紹介します。 (画像をクリックして 大きくなりますヨ)
画像1:直隷総督署の正門(全国重点文物保存単位)
保定市は清代には清朝の直轄地でした。
その時代の省の衙署(官庁)の様子を完全に
保存した中国唯一の建造物です。
画像2:直隷総督署正門の抱鼓型門墩
直隷総督署は、明のはじめ保定府署として設置され、清の雍正二年
(1729年)に改築され今日に至っている約300年の歴史をもつ建物です。
3つの出入口を持つ正門の抱鼓型門墩です。
三組とも太鼓を支える台座は“水中に生えた蓮葉”に作られています。
画像3:古蓮花池北門
直隷総督署の少し東の筋向いに大きな池を持った蓮池書院があります。
画像4:古蓮花池北門の三組の門墩
須弥座に錦鋪を敷き、鼓座に太鼓を置いた北京式抱鼓型門墩です。
石材は漢白玉(上質の白大理石)で直隷総督署のとは異なりますが、
同じくらい古い物かと思います。
画像5:蓮池書院東門(裕華西路290号)
画像6:蓮池書院東門の門墩
近年制作された門墩ではないか?と思います。
画像7:裕華西路287号
画像8:裕華西路287号の門墩
鼓座が異なった形をした門墩です。
画像9:興華路17号の門の前に収蔵された門墩
台座部分が地下に埋もれています。
画像10:勝利街8号の門前に置かれた門墩
画像9と10は正確な形が見られませんが、画像8までの門墩とは様式
が異なる托日型門墩だと思います。
獅子型と門枕石を紹介します。
画像1:勝利街18号の門
「保定市重点保護民居」の表示のある屋敷の大門です。
画像2:勝利街18号の門墩(高:90cm 幅:23cm 長:70cm)
画像3:勝利街18号の門墩
頭部・顔面・前脚の破損は激しいが、二層の須弥座の上に蹲踞した
堂々とした獅子型門墩です。
画像4:門枕 興華路45-3号
西洋式の門構えをした古い民居に無彫飾の門枕石が使われていま
した。
門の様式から推測するに明末~民国時代の建築でしょう。
保定市の約20km西郊外に清代晩期に建てられた王氏庄園があります。
王氏庄園は四つの中庭を持つ1号四合院と二つの中庭を持つ2号四合院が花園をはさんで東西に並んで建っている大邸宅です。
これを紹介した≪腰山王氏庄園≫(侯璐主編 河北美術出版社)に獅子型1組・抱鼓型3組・箱子型3組・門枕8組が掲載されています。
いずれも錦鋪を掛けた須弥座を台座にする北京式の豪華な門墩です。
画像1:1号院大門
画像2:1号院大門の獅子型門墩
顔面が破壊されていますが、精緻な彫刻で飾られた立派な門墩です。
画像3:1号院三進垂花門(左側の門)
1号院二進正房と三進垂花門の間の過道
画像4:1号院三進垂花門の抱鼓
太鼓には富貴の象徴の牡丹が彫られています。
周囲に彫られている連続模様は満族の王族にのみ使用がゆるされて
いるものです。
保存状態の良い立派な門墩です。
画像5:1号院東跨院家塾門
画像6:1号院東跨院家塾門の箱子
上部の獅子の顔面は破損しています。
正面に“蝙蝠が卍を銜え、その下に桃の木”が,側面には牡丹が,箱の
周辺には連続模様が彫られています。
画像7:2号院大門
画像8:2号院大門の抱鼓
門墩には吉祥模様は彫られていませんが、堂々とした門墩です。
画像9:2号院吉利門
画像10:2号院吉利門の箱子型門墩
正面の錦鋪には“蝙蝠が石榴の実の付いた枝を銜えた”吉祥図が彫ら
れています。
(注)蝙蝠は“福”、石榴は“子沢山=子孫繁栄”の象徴です。
側面の錦鋪には“蝙蝠が磬(石製の楽器)を銜えた”吉祥図が彫られて
います。
(注)蝙蝠は“福”、磬は“慶=慶事”の象徴です。
王氏庄園の1号院の奥庭
主人夫婦の日常生活の場です。
四合院は中庭を囲んで四方に建物があり、母屋は必ず南向きで、主人夫婦が住む棟です。
南向きなので冬暖かく夏涼しく快適です。
庭は鉢植えの植物や金魚鉢などを置き、季節の風情を楽しみながら家事や食事をする贅沢な場所です。
第1節 保定市 終