第2節 登封市
登封市は洛陽から約60km東にあります。山岳信仰の五岳の一つ=嵩山があり、道教・仏教の中心地で古代から栄えた所です。日本では少林寺が有名です。
2010年3月27~28日に行き、門神型:2組 獅子型:4組 抱鼓型:18組 箱子型:2組 門枕:13組 合計39組を確認しました。
少林寺には唐代以降各時代の地位と人望の高い名僧の墓地 “塔林”があります。
画像1:塔林の風景 (画像をクリックして 大きくなりますヨ)
この墓地には228基の塔が建てられています。
画像2:法玩禅師の塔 (撮影:池上勝次氏)
法玩禅師は唐代の名僧で790年に逝去されました。
画像3:法玩禅師の塔の門神型門墩
門神の顔は壊されています。
画像4:月舟禅師の塔
月舟禅師は明代正徳年間(1506~1521年)に逝去された名僧です。
画像5:月舟禅師の塔の門神型門墩
門神と獅子の頭部は壊されています。
以上の2基の塔の両側の門枕上に武人が立っています。
もしこれが門の内側で門扉を支えていたら、次の二点で大変貴重な“門神型門墩”です。
①“地上の建造物に門墩を使用した最古の事例“
今のところ、門墩発生時期に定説はありません。一部に宋代と言う説もありま
すが……。
地下の墓門には門枕の上に獅子を乗せた獅子型門墩が北周の安伽墓(579
年:西安市大明宮郷炕底寨村)や隋の李和墓(582年:陝西省三原県双盛村)
に有ります。唐代のも幾つか発掘されています。
②“人物の丸彫りを門墩に乗せた貴重な事例”
抱鼓型や箱子型門墩に人物像を浮彫りにした例は幾つもありますが、門墩と
して人物像を乗せた門墩はこの2組以外には見たことは有りません。
登封市では嵩山書院と少林寺で獅子型門墩を4組見ました。
どれも獅子を乗せた台座が大変簡素で古い物と思われます。
北魏の484年に寺として創建され、その後書院(教育施設)となり、宋時代には中国四大書院の一となった嵩陽書院の山門に獅子型門墩があります。
画像1:嵩陽書院
画像2:嵩陽書院の獅子型
有名な少林寺にも獅子型門墩が3組ありました。
画像3:少林寺の獅子型 (撮影:柳井直躬氏)
画像4:少林寺の獅子型 (撮影:阿鷹満州男氏)
画像5:少林寺の獅子型
画像2:3:4の3対は良く似た厳しい獅子で、画5は少し愛くるしい獅子で制作時期が異なるのではないかと思います。愛くるしい獅子の方が古いのでは?
少林寺に収蔵品も置かれてます。
獅子型門墩も何組か見えます。
(Google Earth掲載)
抱鼓型を少林寺・嵩陽書院・嵩岳寺・中岳廟・観星台で18組見ました。
太鼓を乗せた台座の型で分類すると須彌座型:10組 水中蓮葉型:5組 箱子型:3組に分類できます。
まず、台座が須彌座型の抱鼓型門墩を紹介します。
日本では拳法で有名な少林寺は北魏の495年創建で、527年にインドから来た菩提達磨が禅宗を始めた禅寺としても有名な大変広い境内を持つ大寺院です。
画像1:少林寺山門 (撮影:阿鷹満州男氏)
画像2:少林寺山門の抱鼓型門墩 (撮影:柳井直躬氏)
太鼓の胴に太鼓を吊る環と環に付けられた房が彫られています。
太鼓の胴に獅子や獣吻を彫る以前の古い様式の門墩です。
画像3:少林寺内の抱鼓型有獣吻 (撮影:阿鷹満州男氏)
太鼓の胴に龍の子の1つ“獣吻(陰邪を好んで食べる)”の頭が彫られて
います。
他にも抱鼓型有獣吻は少林寺内に5組と嵩陽書院に1組あります。
画像4:中岳廟御書楼
画像5:御書楼の抱鼓型有獣吻門墩 (高:72cm 幅26cm 全長68cm)
太鼓を受ける“鼓座”が二層(上段は蓮の葉)に造られた珍しく豪華な
門墩です。
元代初期に建設された“観星台”が登封市にあります。700年の歴史を持つ中国現存最大の古代天文観測設備です。
画像6:観星台の第二門
画像7:観星台第二門の抱鼓型有獅子門墩 (撮影:阿鷹満州男氏)
少林寺にも抱鼓型有獅子門墩は1組ありました。
少林寺に太鼓が乗せてある台座が“水中から生えた蓮の葉”の型に作られている5組の抱鼓型門墩がありました。
この門墩は台座を須弥座にする以前の型を伝える古い型の門墩です。
画像1:少林寺山門の右脇門 (撮影:阿鷹満州男氏)
右側の大きな門が寺の山門です。
画像2:山門右脇門の門墩 (撮影:柳井直躬氏)
この太鼓の胴には太鼓を吊る“鼓環”が彫られています。
太鼓の皮には玉を掴んだ龍が、周辺に唐草模様が線彫りされています。
太鼓も蓮の葉の台座も質素で古い門墩と思います。
画像3:少林寺山門の左脇門 (撮影:阿鷹満州男氏)
左側の大きな門が寺の山門です。
画像4:山門左脇門の門墩 (撮影:阿鷹満州男氏)
この太鼓の胴にも太鼓を吊る“鼓環”が彫られています。
太鼓の周辺に唐草模様が線彫りされています。皮の部分に模様が
彫られていますが内容は解りません。
太鼓も蓮の葉の台座も質素で古い門墩と思います。
画像5:少林寺 西方聖人楼左脇門 (撮影:阿鷹満州男氏)
画像6:西方聖人楼左脇門の門墩 (撮影:阿鷹満州男氏)
少林寺の西方聖人楼右脇門にも全く同じ門墩が有ります。
西方聖人楼左右脇門も門墩も近年造られたものだと思います。
画像7:少林寺内 門墩の外側 (撮影:阿鷹満州男氏)
画像8:画像7の門墩の正面 (撮影:柳井直躬氏)
太鼓の胴に“獣吻”、台座の正面には“梅の小枝を銜えた仙鹿”の
吉祥 図が彫られています。
この門墩も近年作られたものと思います。
太鼓を乗せている台座が“箱”の型に作られている3組の抱鼓型を紹介します。
画像1:中嶽廟 峻極門
中嶽廟の創建は秦代(BC221~BC206年)。その後拡張され全長
1.3km面積10万㎡ 河南省最大の寺廟建築。
現存する建築物は清代再建。
画像2:中嶽廟 峻極門の門墩
台座が二層で全面に模様が彫られた大変豪華な門墩です。
台座正面下段に“太陽と瑞雲に海馬”、 上段に“八枚花弁の蓮花?”
台座内側下段に“瑞雲の下に仙鹿”、上段に“蓮花?”、太鼓に “瑞雲
と龍”が彫られています。
画像3:観星台 山門
画像4:観星台 山門の門墩 (撮影:阿鷹満州男氏)
太鼓の胴に“獣吻”が彫られているだけの大変簡素な門墩です。
画像5:嵩陽書院管理中心(センター)
画像6:嵩陽書院管理中心の門墩
正面に牡丹が彫られた台座に太鼓が埋められた簡素な門墩です。
近年作られたと思われます。
箱子型2組と門枕13組を見ました。
画像1:少林寺薬局 (撮影:阿鷹満州男氏)
画像2:少林寺薬局の箱子型門墩 (撮影:阿鷹満州男氏)
正面には萬病に効く霊芝が彫ってあります。
薬局は近年建てられ門墩も新しいものと思われます。
画像3:中嶽廟西脇門
画像4:中嶽廟西脇門の箱子型低門墩
正面には可愛い獅子が線彫りされています。
この門も近年に建てられ門墩も新しいものだと思います。
登封市では門枕を使った建物は見掛けませんでした。今回気が付いた13組は全て塔林の供養塔の戸口に設置されていたものでした。
画像5:裕公塔
画像6:裕公塔の戸口
曹洞宗中興の祖と言われる裕福僧都の塔で1287年(元代)に
建設されました。
10mで塔林で一番高い塔です。
画像7:海公禅師塔の戸口
第2節 登封市 終